取材

人気のそば屋さん「つなぎや」の店主は赤髪の女性!?

赤髪がトレードマークの女性そば職人の遠藤さん。今回はそばにかけるあつい想いなどを話してくださいました。そばに関して、職人さんからお話を伺う機会はなかなかないので大変貴重なお話を伺うことができました。ぜひお楽しみください。

 

 

プロフィール
遠藤 未里 (えんどう みさと)  平成3年3月11日生まれ 鳥取県日野郡日野町出身
高卒で岡山のボクデンという韓国料理店に就職し、調理やサービスを基本から学ぶ。辞めて鳥取へ帰ってきて、友人の紹介で和尚さんと出会う。その後、日南町のときわすれ清水屋にて約5年間修行し、その間も掛け持ちでいくつかの飲食店や仕出し屋でアルバイトをしながら料理を学ぶ。清水屋を辞め、広島の自動車部品工場で2年間働いて開業資金を貯める。鳥取に戻ってすぐの2018年4月に、鳥の巣での営業を開始。2019年6月、鳥の巣での営業を終了。

 

そば職人を目指したきっかけ

私もともと20歳ぐらいまでそばが大嫌いで、それは年越しの時に家族の中で1人だけうどんを食べてたくらいで(笑)

でも、ある時出会ったお寺の和尚さんがそば好きで、和尚さんに連れていって頂いた蕎麦屋で食べてみたら、「あれ今までのと違う」ってなったんです。

そのお店でそばの魅力に出会って、そばを好きになりました。

そこから和尚さんを通して、そば屋さんでバイトをさせてもらうことになって、働いているうちに店長から「そば打ってみる?」と言われて打ち出したらハマってしまって。

将来的にはお店を出すことを考えて、そば職人を目指したのが21歳の時です。

 

琴浦に来たワケ

琴浦に来たのは今から5年前くらいだったんですけど、当時そばを教えてくれていた師匠が赤崎にお店を移転すると言い出したんです。

その時に「ついて来い」と言われたので、自分も琴浦へ移住してきました。

お店自体は2年くらいで撤退してしまって、師匠は日南に戻ったんですけど、独立したいという気持ちがあったので、私は琴浦に残りました。

その後、開業資金を貯めるために広島に出稼ぎに2年くらい出ていて、昨年戻って来て、縁あって鳥の巣でお店を始めて1年2ヶ月くらいになります。

今の場所で1年2ヶ月くらい続けて来て、次はステップアップということで倉吉で自分のお店を持つことに決めました。

 

倉吉に進出する理由

本当は馴染みのある米子でしたかったんです。

でもここ中部ではじめて、結構倉吉から来るお客さんが多くて。

今まで倉吉の人がどこのそば屋さんに行ってたか聞くと、関金とか鹿野とか蒜山とかそっちの方まで出ていたそうなんです。

その辺りから比べると、琴浦はやや近いので、近くにもいいお店があるということで通ってくださる方が多くいます。

倉吉や中部には蕎麦屋さんが少ないんです。

米子は多くて、東部もミシュランに載るような名店がちょこちょこあったり、でも中部にはない。

中部のそば文化を盛り上げたいと思い、倉吉で挑戦してみる事に決めました。

 

そばのこだわり

そばは本当に店ごとに全然違って、それがまた面白さでもあります。

よく聞く二八そばというのはそば粉8割に対して小麦粉が2割入ってるんです。

小麦粉が入る分だけそばの味が薄れてしまうので、そば粉と小麦粉の割合で全然味が違うんですね。

原材料の値段もいいものだと大体そば粉が小麦粉の4、5倍くらいします。

外国産だったり安いそば粉はその分風味も落ちる。

私はこういうそばを打ちたいっていう自分の理想を製粉業者さんに話しています。

そうすると、「こういう粉はどう?」と提案をしてくださるので、実際工場に見学に行って、そば粉を1つ1つ味見させてもらって。

粗さというか挽き方でも食感とかが変わるので、じゃあこの粗さでっていうのもその時に相談して決めます。

で、今うちで出してるのはそば粉が9割で小麦粉が1割。

ボソボソで短い10割そばというのもたまにあるんですが、そうならないように小麦粉を1割入れて繋がりやすくしています。

細くて喉越しがよくて、サーっと食べた後からそばの香りがふあ〜っとくるのが個人的に好きなんです。

 

こだわりのそばつゆ

で、そばつゆに関しては大体作るのに最低でも2週間以上かけて作ります。

醤油やみりん、酒、砂糖などを使ってかえしという元ダレみたいなものを最初に作ります。

それをどれだけ寝かせるかっていう問題なんですよ。

これもお店によってバラバラですが、短いところは数日、長く寝かせるところは2年寝かせるお店もあります。

うちは原材料から結構こだわっていて、醤油はいま大崎上島っていう島の醤油を使ってるんですけど、そこも去年見学に行かせてもらって色々勉強させてもらいました。

醤油自体がもうそこで2年くらい熟成させて、こだわって作られていて、元から熟成されているものを使っているのでそこまで寝かせなくてもいいかなと思って、うちでは2週間くらい寝かせるようにしています。

開栓したての醤油の風味がとても良いので、それを活かす為でもあります。

寝かすことで素材が上手く溶け合わさってまろやかになるので本当に寝かすと寝かさないでは全然違うんですよ味が。

出汁はその時にとって、カツオとか昆布、椎茸を使って、大体前日から水に浸して、そこから何時間も煮詰めて出汁をとって、出汁とかえしを合わせるんですね。

普通の蕎麦屋さんではそれを合わせて完成なんですけど、私が師匠から習ったのはそれをさらに湯煎でじわじわ煮詰めることでさらに旨味を凝縮させます。

湯煎は大体二、三日かけてじっくり。

冷やして、また温めて冷やしてっていうのを繰り返すのが大切で、1度にぎゅっじゃダメなんです。

そういうこだわりを突き詰めてできたのがうちのそばつゆです。

もっと簡単に作る店もいっぱいありますけど、私は師匠のそばつゆが好きなのでそれを参考にして、醤油とかは自分で探し歩いてようやく作ることができました。

 

つなぎやのうり

蕎麦って黒と白で分けられるんですけど、そばの実って黒い殻がついてるんですよ。

それをそのまま挽くと黒っぽいそばになるんです。

殻をとって挽くと、黒い部分がないので白っぽいそばができあがります。

師匠のそばが完全に殻のないそばだったというのもあって、そっちの味が個人的に好きだったし、でも殻が入るとそのそばの風味が強くなったり、ザラザラとした穀物感が逆に美味しかったりするので、そば粉は2種類ブレンドしてます。

殻がついたまま挽いた粉と殻をとってから挽いた粉を混ぜて、その割合を自分で考えて。

本当は今のそばにもっと透明感が欲しくて、自分の理想とするそばにはまだちょっと遠いんですけど。

うちのそばは細くて喉越しが良く食べやすいので、女性や子どもさんに人気があるんです。

太くてずっと噛んでなきゃいけないそばは子どもさん飽きちゃったり。

 

師匠から教わった技術をベースにアレンジ

そばの打ち方は最初は師匠に教えてもらいました。

その他にも、今は本やYouTubeで動画があったり、いろんな人が惜しみなく自分の技術を書いてくださったりしてるので、そういうのを参考にして、師匠の技術を元にしてアレンジしています。

常に勉強はしていて、そのままじゃいけないと思っています。

鴨そばも師匠の店にはなかったんですけど、都会では割と人気なのに、この辺には出しているところがそんなにないので、ぜひ出したいなと思って。

そういうメニューのレシピも本を参考にして考えるんですけど、素材自体で味が違うので、日々勉強しながら作っています。

 

仕事をしている時間がほとんど

5時くらいに起きて、そばを2、3回打って、8時か9時くらいにお店に来て、11時半にオープンするまでずっと仕込み。

11時半に営業をスタートして、14時に終わって片付けを始めてスムーズに行っても16時になります。

疲れた日はゴロゴロしてしまって、18時くらいになったり。

少し前までは20時から24時までバイトをしていたので、うだうだしすぎて片付けが残ってしまっていたら、バイト終わりにまたお店に寄って片付けをしていました。

1時とか2時まで片付けをしていたこともありましたね(笑)

1日19時間労働ぐらいの日がざらにあり、そば屋として続けていくのであればそれくらいしないと生活していけないくらいでした。

 

自称世界に1人の赤髪そば職人

よくこの見た目のせいでバンドマンと間違われるんですよ(笑)

自分名字が遠藤で名前はわかりやすいんですけど、一発で覚えてもらいにくくて、赤髪のそばの子って言ったら伝わります。

そば打ちをするのはほぼ日本だけなので、日本で1人ということは世界で1人、自称世界で唯一の赤髪のそば職人っていうキャッチコピーでやれば覚えてもらえやすいと思って。

広島にいるときに髪を染めてて、金にしたり赤にしたり銀にしたり。

で、広島って野球でカープが有名じゃないですか。

それでカープとは何の関係もなしに赤に染めた時にたまたますごく褒められて(笑)

でこっち戻って髪染めるときにも、赤にしたら覚えられやすかったので、そのまま。

鳥取県内だと赤髪の人は少ないので。

 

そばの価値をもっと高めたい

琴浦ではそばの魅力を伝えようというコンセプトでやってたんですけど、それを概ね達成できたというか、結構広めれたと思っていて。

今度お店を出す倉吉ではそばの価値を高めたいんです。

東京とかではそばって高級なイメージがあって、あの辺ではそば屋でお酒を飲んだり、つまみを食べて、そばも高いものっていう周知があるんです。

だから、〆の為にそばは元から量が少なく、大盛りや二枚食べる事が前提だったりするんですよ。

でも、この辺ではそば屋でお酒を飲む文化がなくて、食事として食べるから量が必要。

ある程度ボリュームがあって、値段が低いってのがこの辺のそば屋なんですけど、こだわりを突き詰めると原材料も高くなるし、今いろんな物価が高騰してるし、消費税も上がるし、こだわればこだわるほど苦しくなるんですね。

そば屋をやっていて苦しいことも結構あって、そんな中だと後継者も育ちにくいので、そば屋として成功するビジネスモデルを作りたくて。

自分がまずその見本になりたいというのがあって、その第一歩として、鳥取のそば文化でそばの価値を上げたくて、倉吉ではそれを目標に夜営業して、お酒も出して、都会のスタイルを持ち込んでみようと思っています。

倉吉で夜営業しているそば屋がなくて、第1号なのでどれだけ通用するかなっていうのがあって。

 

自分の周りの人を楽にさせたい

今後の展開としては、自分のお店を軌道に乗せて、自分の家族とか周りの人を楽させてあげることができるくらい生活に余裕ができるようにしていきたいし、そうしないと自分も苦しいし、後継者とかもやっぱり育てれないし。

はたらくって「はた」を「らく」にするっていうことだってよく言うんですけど、自分の身近な人を楽にするっていうのが30代くらいの目標で、そこから先は今度は地域貢献みたいなのをしたくて。

前々からそういうのに興味はあったんです。

例えば、福祉施設とかでそばを打ったり提供したり、災害の支援というか元気を取り戻すためにそばを通して力になれるようにもなりたいし、最終的には、つなぎや、生産者、お客様、地域が喜ぶ良い循環をもたらして、社会貢献をしていきたいです。

 

移転後住所:〒682-0021  鳥取県倉吉市上井262-7
Facebook:手打ちざる蕎麦 つなぎや(移転後は 蕎麦酒房 つなぎや)

 

 

自分の知らない世界すぎて、めちゃくちゃ楽しい取材でした!そばに対する熱い想いも、和尚さんとの出会いがあったからこそだと思うと、人との出会いはやはり大切ですよね〜。もちろんそばもいただきまして、めちゃくちゃ美味しかったので、移転後も通おうと思います!弟子も募集中みたいなので興味ある方は直接お問い合わせください!

(Visited 10,441 times, 1 visits today)
The following two tabs change content below.
morisato

morisato

もりさと(本名:森田悟史) 京都府生まれ、米子市出身。メディア内では主に取材・写真撮影・動画撮影を担当。基本的にアウトドア派で、人との交流を大切にしている。美味しいものが大好き。

関連記事

  1. 取材

    18頭ものヤギを飼う「やぎのいえ」竹川奈緒さんにインタビュー

    2018年4月に鳥取県西伯郡伯耆町に移住し、「やぎのいえ」という屋号…

  2. 取材

    K-POPカバーダンス教室YUMYUMのエリさんにインタビュー

     山崎エリ 1995年 米子生まれ米子育ち 小学生の頃にチアダン…

  3. 取材

    1日で200個のおにぎりを売る「おむすび屋ひとむすび」おにぎり君にインタビュー

    今回は、大山町でおにぎりを売っている小橋さんにインタビューをしてきま…

  4. 取材

    「スポーツトレーナー」岩田彩伽さんにインタビュー

    こんにちは!今回はもりさとの専門学校時代の後輩にあたる、岩田彩伽さん…

  5. 取材

    米子出身の画家、安藤真央さんにインタビュー

    今回は米子出身で画家として活動をしている安藤さんにお話を伺う事ができ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

カテゴリー

最近の記事

  1. 取材

    1日で200個のおにぎりを売る「おむすび屋ひとむすび」おにぎり君にインタビュー
PAGE TOP